ちょっちミサトさん、その4

 使徒も来ない、ネルフのテストも無い平凡な平日の夕方。

 シンジは・・・・

 ジュージュージュー

「焼け具合はバッチリだ、あとはソースを作らないと」

 葛城家の主夫シンジは夕食の準備に忙しい、台所が自分の城だと言わんばかりに使いこなしている。

「う〜〜ん、ちょっと甘いかな」

 手作りソースを味見して調味料を付け足す。

「サラダを」

 新鮮な野菜、包丁使いも見事である。男性なのに同居人の二人(女性)より料理が上手である。

「よし!あともう少しだ」

 夕食完成まであと五分ほどであろう。

 

 

 アスカは・・・・

「ムッキ〜〜〜〜!!」

 リビングで叫んでいた。

「クエクエ」

 テーブルを挟んでペンペンと向かい合って座っている。

「アンタちょっと強すぎよ、手加減ってモノを知らないの?」

「クワクワクエ」

 アスカはペンペンに指を突き付け文句を言うが、ペンペンはくちばしを上に向け喜んでいる。

「もう一回勝負よ、今度は負けないわ!」

「クエッ!」

「アスカ!いくわよ。はあああ!!」

 アスカの右腕が高く上がりテーブルに向かって振り下ろされる。

どえええええ!

 振り下ろしが速い、このままではテーブルが真っ二つ。

「えい!」

 ペチッ!

 右手に持っていたものを置いた。

「ふふふ、やっぱりオセロは先攻ね」

 腕を組んで笑う。

「クエッ」

 ペチッ!

 ペンペンは物動じずに静かにコマを置いた。

 平凡な平日の夕方である。

 

 そこへ・・・・

「た、ただいま〜〜〜〜・・・・・・」

 ミサトが帰ってきた、いつもの元気が無く声に張りが無い。

「お帰りなさい、ミサトさん」

 シンジはミサトを出迎えるために料理を一時休め、玄関に向かった。

「ただいま・・・シンちゃん」

 腕を前にダランと垂らして猫背で廊下を歩くミサト、体もふらついてる。

「どうしたんですか?ミサトさん。元気無いですよ」

 当然の事ながらミサトの異変?に気づき声を掛ける。

「そ、それがね・・・・・ごほごほごほっ!!

 ミサトは床に膝をつくと、口に手を当て大きく咳きこんだ。

「ミサトさん!大丈夫ですか?」

「だ、大丈夫よ・・・ごほごほごほっ!!

「ミサトさん!」

 シンジはミサトに肩を貸し、ミサトの部屋に向かった。

「ミサト、どうしたのよ?」

 アスカもミサトの大きな咳きを聞き、部屋にやって来た。

「体調が悪いみたいなんだ、救急車を呼んだ方が良いかな?」

「だ、大丈夫よ、休んでいれば良くなるわ。それよりシンジ君、愛用している薬があるのそれを持ってきて」

「はい!」

 ミサトは布団に入り仰向けになると、息を整えた。

「薬はどこにあるんですか?」

「冷蔵庫よ、ビールが薬なの」

「はい、持ってきます」

「えっ?」

 真顔で言うミサト、シンジは返事をすると台所に走っていった。アスカは怪訝な顔で首を傾げた。

 

「ミサトさん、持ってきました」

「ありがとう」

 ミサトは受け取ると静かにプルトップを開けて口をつけた。

 ゴクゴク、ゴクゴク、ゴックン!

「ふうう〜〜」

「落ちつきました?」

 心配そうにミサトを見るシンジ、ミサトは口の回りについた泡を拭き取ると息をはいた。

「ええ、ありがとうシンジ君」

「良かった〜〜〜、体を大事にしてくださいね。夕食はどうします?」

「う〜〜ん、どうしようかしら。薬を飲みながらだと大丈夫と思うわ」

「急いで用意しますね」

「おねがいん」

 シンジは大急ぎで台所に戻り、夕食の準備を再開した。

 部屋に残ったミサトとアスカ・・・・・

「ミサト、凄い嘘ね」

「嘘じゃないわよんうっ!また発作が・・ごほごほごほっ!

 口に手を当て激しく咳きこむがアスカは白い目でミサトを見ていた。

「アホらし、引っかかるシンジもバカねえ」

 アスカは呆れてリビングへ戻って行った。

うっし!この手で行こう」

 一人になったミサトはガッツポーズを決め、喜びに浸っていた。

「仕事をしないで考えた甲斐があったわ〜〜〜」


 仕事もしないで一日中考えた嘘<仕事しろ(^^)見事に成功しました。

 こんな嘘引っかかる人はいないと思ったら・・・・シンジ君、引っかかりましたね。

 今回はシンジ君がヘッポコでした。ペンペンに負けるアスカちゃんもヘッポコですが。

 こんな小説?でも最後まで読んでくれた方々に感謝します。


NEON GENESIS: EVANGELION ちょっちミサトさん、その4